PAELLAS MATTON
メインストリームの音楽も取り入れる
フラットなスタンスこそ
テン年代以降の世代の特徴。
掲載:mix 2019 夏号(2019.06.30)
取材・文:福島 大祐 / 写真:山辺 学(calm photo)
パエリアズ
PAELLAS MATTON
ボーカルのMATTONとベーシストのbisshiを中心に大阪で結成されたPAELLASは、’14年に東京に拠点を移して本格活動したニューカマーながら、早くからアジアを中心に国外でも精力的に活動。楽曲は’60~’70年代のブラックミュージックをはじめ、クラシカルなバックボーンを持ちながらもトレンドのサウンドも敏感に取り入れるという、音楽ジャンルも活動範囲もボーダーレスな4人組だ。今回話を聞いたフロントマン・MATTONの自然体な佇まいや発言からも、そのフラットな姿勢が垣間見えた。彼曰く、「それこそが自分たちの世代の特徴」だという。
MATTON:オアシス、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、デヴィッド・ボウイ、U2、BLANKEY JET CITY、イエローモンキー、スガシカオ、くるり、ゆらゆら帝国…。ブラックミュージックをちゃんと好きになれたのは大学に入った頃で、友人が教えてくれたディアンジェロやマーヴィンゲイ、ダニー・ハサウェイ、カーティス・メイフィールドなどが入口でした。
’05年頃はイギリスの若手のバンドが盛り上がった時代で、自分も好きで追ったんですけど、’10年代はアメリカのインディーズのミュージシャンたちによるムーブメントが起きたところで僕もそういう音楽が好きになって、そこからR&Bに緩やかに移行していったのが’13~’14年。ちょうど僕らが上京したころで、自分たちもそこに影響を受けましたね。
最新作『sequential souls』では’60年代以降のニュー・ソウルを土台にしているのだとか。
MATTON:自分たちの生きている時代は今なので、そのエッセンスは絶対に入れるようにしています。アメリカのチャートでNo.1になるようなべたなポップスも本当に好きで聴いていますから。そこになんのてらいもなく、『これいいじゃん』って自分たちの音楽に取り入れられるようになったのが自分たちの世代だと思います。ロックを好きな人は“メインストリームの音楽をダサいものとしなきゃいけない”みたいな雰囲気があったじゃないですか。それが今は全部フラットなものとして受け入れられるようになったのは、’10年代以降の世代の特徴ですね。
と、冷静に自己分析をした。
MATTONが作曲に携わらず、作詞に集中しているのも本作のポイントだ。
MATTON:作曲したメンバーが全員そういうコンセプトでいこうって決めたわけじゃないのに、なんか統一された空気があって。今までのPAELLASは“都会の夜を独りで歩いている”というイメージがあったんですけど、今回はロッジみたいなところで暖炉に火をくべて、近しい人と親密な会話をしている時間、みたいな印象で。歌の響きの残し方や歌詞の部分でそういう雰囲気を出したいなと思いました。これまで技術や経験を理由にできなかったことが、初めてやれたとハッキリ言えるアルバムです。ただ、満足はしてないですし、今歌えばもっと良く歌えると思います。
“近しい人と親密な会話をしている時間”というイメージは、彼らのライブにもそのまま当てはまる。アジアツアーも行なうPAELLASだが、海外での活動を経て得た気づきや発見は?
MATTON:日本という国に対していろんな面で興味を持ってくれている人たちなので、みんな日本語がわかるんですよね。『MCは英語、日本語、韓国語のどれがいい?』ってステージから聞いたんですけど、みんな『日本語!』って言うんです。『もっと関西弁で話してほしかった』って(笑)。お互いにとって歴史の上で良い交わり方もあれば悪い交わり方もあったりする国もある中で、日本のカルチャーに対してそれだけ熱い興味を持っている人たちがこんなにいるんだなというのは驚きでした。
■RELEASE
発売中 Album『sequential souls』
CDのみ通常盤 3024円