ARTIST'S VOICE

當山みれい

自分自身が反面教師。

私の曲に共感してしまう人に

「こうなっちゃ駄目だぞ」と伝えたい


掲載:mix 2019 冬号(2019.11.22)
取材・文:福島 大祐 撮影:川﨑 一徳

 

とうやま

山 みれい

 13歳で渡米し、NYの名門ラブ・アポロシアターのアマチュアナイトで優勝を経験。その後、全米トップのゴスペルチーム「Gospel for Teens」にリードシンガーとして所属するなど、當山みれいは21歳にして稀有で豊富なキャリアを持つソングライターだ。新曲を発表すればサブ救のチャートを席巻する彼女は、等身大のラブソングが同世代を中心に支持を集めているけど、世代や性別の壁を自由に横断するそのマインドも興味深く、イチ女性として奥の深い人物だということがわかった。

—最新EP『PLAYLIST』では同年代のまるりとりゅうが、年下のラッパー・さなりさんとコラボレーションされていますね。

當山:さなりくんは16歳で私は’98年生まれなんですけど、’00年の境目でだいぶ違うというか(笑)。私たちっていわゆる悟り世代と言われるんですが、すっごい物静かな彼は私が言ったことに対して音楽の歌詞として返してくれます。SNS上では面白いんですよ?まるりとりゅうがの2人は5年ぐらい前から友だちで。インスタグラムがきっかけでカラオケ行ったりするようになってコラボが決まったので、そういう出会い方も今どきなのかなと思います。


—『PLAYLIST』では全体を通して叶わない恋や後悔の念が多く歌われています。

當山:書きたい曲を書いていたら勝手に悲しくなっちゃうんです(笑)不器用な女の子が主人公の曲が多いですが、自分自身もそういう部分が大きくて。自分を半ば反面教師的な感じで書いている曲が多いんです。言い過ぎちゃうので最初は言わないように頑張るんですけど、向こうからしたら「なにを言いたいかわからない」となるから、1から10まで説明したらめちゃくちゃ相手のことを傷つけているということがよくありまして。直したいと思うんですけど(笑)。


—でも、大事なことは言えなかったり?

當山:そうです、そうです。『大嫌い』という曲でも、「大好き」って言えてないし。私の曲を聴いて共感してしまう人は、「私が言えてないことをちゃんと伝えてくれ」と思います。「こうなっちゃダメだぞ」と。

 


—サウンド面では海外のトレンドも感じられますね。

當山:歌っている題材が重めなものも多いので、いかに可愛いサウンドにできるかは自分でも意識したところで。私が普段聴いている音楽は洋楽が多いですが、今は海外の音楽がトレンドに早くて日本が遅いとかもないんですよね。私のファンの方にはアジア圏の方も多いので、トレンド感を意識しつつもキュンとするサウンドを目指しました。


—海外との比較の話がありましたが、海外での生活の経験も含めて、日本と海外の違いを感じる時はありますか?

當山:MeToo運動のムーブメントがすごくて、「男の人に搾取されないぞ」というガールズパワーがとても取り上げられているので、自立した女性像が海外では強くなっているなと感じています。R&Bなど、最近はLGBTの人に向けた曲も増えていて、どんどん性別の壁がなくなってきている印象です。女性は妊娠・出産があり、結婚したら男の人に養われるみたいな感覚がまだあるんだと思うんですけど、それがハンデにならない社会になればいいですし、女性が産休を取って仕事復帰した時に、お父さんが育休を取るような社会になればみんなが住みやすいですよね。音楽もそれに伴って、どんどん自由になっていくんじゃないかな。


—興味深い意見ありがとうございます。最後に、来年の抱負を聞かせてください。

當山:前作はアンサーソングを集めたアルバムで、今年はそこから「當山みれいはどんな音楽を自分から発信していくのか」という方向にシフトチェンジしていった一年でした。ようやくスタート地点に立ったなという気持ちもあります。来年は日本への注目が高まっていく年だと思うので、當山みれいという存在もいろんな人に知ってもらえる、今年達成したものをもっと広げていけるアーティストになっていけたらいいですね。

 

————————————– ≪ Addition Talk! ≫ ————————————–

 

Q.十代のころから活動している當山みれいさん、成人を迎えて心境の変化は?

當山:よく飲み場に誘われるようになりまして、楽しい会もあれば自分の肌に合わない会もあって、自分の身は自分で守らないといけないなと思うことが増えました。私、お酒めっちゃ弱いんですよ。昔は飲まなきゃダメだって文化がありましたけど、今は“アルハラ”って言葉もあるし、そういう理解も深まってきていますよね。

 


 

■RELEASE

発売中 EP『PLAYLIST』

初回生産限定盤(CD+DVD)2530円
CDのみ通常盤 1980円